問題1
表現の自由は壊れやすいという性質から偉い人が相手の意見を言わせないようにすることはより慎重に判断しなければならないという考え方
二重の基準論が正解です
教育にも関係してくる考え方なので出題しましたが、「二重の基準論」という名前や関連する用語名は司法試験でも受けない限り覚えなくていいです。
表現の自由は考えたことを自由に相手に伝えることができることをいいます。
教育現場では、「教科書検定」と「生徒の発言を制限するべきかの判断」に表現の自由の考え方が関係してきます。
「自由は考えたことを自由に相手に伝えることができること」は政治参加や自己実現につながることとその権利の壊れやすさから人権のなかでも特に大切なものとされており、喧嘩を仲裁するときなどに生徒の口を無理やり塞いでいいかの判断は普段よりも慎重に考えて行う必要があります。
なお、基準の一つには以下の考え方が提唱されているので良ければ参考にしてみてください。(教採には一切出ません)
- ・生徒の言おうとしていることの何がだめなのかを明確に伝えること(明確性の理論)
- ・生徒の発言によって授業の進捗や人間関係などに緊急で大きな影響が発生することが明らかであること(明白かつ現在の危険の基準)
- ・伝え方を変える等、他の手段を検討しても見つからないこと(LRAの基準)
問題2
裁判例上教科書検定は検閲にあたるか
あたらないが正解です
前提として、日本の小学校から高校までの教育は平等を重視している(と教頭は解釈しています)。
平等な教育を実現するための制度設計として学習参考書のうち文部科学大臣の認定をもらったもののみを学校の教科書として使用できるようになっており(学校教育法34条1頂)、このうち国が学習参考書を教科書としても使えると認定する過程のことを教科書検定と呼ばれています。
※教科書検定の認定をもらっていない学習参考書も有益適切なものは副教材として授業で使うことはできます。(学校教育法34条4頂)
しかし、教科書検定は国の政治的な意図がのるように事実上強制しており、「表現の自由」の観点からおかしいのではないか社会問題となっています。(第一次家永家永教科書訴訟など)
なお判例によると、教科書としての使用を禁止するだけで、一般の参考書として発表することを禁止しているわけではないので検閲にはあたらず法律学的には何も問題とはされており、教頭(管理人)も同じ考え方なのですが、ひとによって考え方が分かれるので一度立ち止まって教科書検定が適切かどうかを考えてもらえると嬉しいです。
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問題3
学習指導要領は法体系のうちどこに含まれるか
命令が正解です
日本の法律の体系としての優先順位は以下の通りです。
- 憲法……権力者を縛るための法律
- 法律……国会議員が作成した法律(例:学校教育法)
- 政令、命令……官僚などが法律の内容を具体化して作ったル一ル(例学習指導要領)
- 条例……地方議員が作製したロ一カルル一ル
なお、勅令は命令のうち、天皇による命令のことをさしており、戦前の教育は命令や勅令勅令勅令の影響が大きかったそうです。
問題4
表現の自由における検閲の禁止扱い
絶対的禁止が正解です
「検閲」とは国家権力が、思想内容物の内容を発発表前に審査して、不適当と認めるものを発表を禁止することをいいます。
明治時代には国家権力により思想・表現の自由が著しく制限されたという歴史的経緯を踏まえて現在の日本国憲法では禁止しています。
このことは教育内容についても関係しており、日本の教科書検定という制度は事実上の国家権力による検閲なのではないかと度々社会問題にもなっています。
余裕があれば教科書検定は適切かということも一度立ち止まって考えてもらえると嬉しいです。
問題5
教育を構成しているもののうち、教育内容や指導法など学習者に合わせる必要性が強い部分
内的事項が正解です
公教育の教育権論争において、学説の一つでは教育の内容を以下の2つに分けて考える必要があるとされています。
- ・外的事項……時間割編成、教育条件の整備
- →教育行政の権限
- ・内的事項……教育内容や指導法など学習者に合わせる必要性が強い部分
- →教員の権限
問題6
教科書検定が国による事実上の検閲なのではないかという社会問題となるきっかけとなった事件
家永検定教科書事件が正解です
教科書検定とは、民間企業が作った学習参考書を小学校~高校までの教科書としても使用に耐えるものとお墨付きを与えるために文部科学省が内容を確認する制度です。(学校教育法34条1頂)
※教科書検定によるお墨付きを受けていない参考書も有益適切なものは副教材として使用することはできます。(学校教育法34条4頂)
家永検定教科書事件は教科書検定によるお墨付きを受けた教科書を一切使わなかったために懲戒解雇となった事例です。
この事件をきっかけに教科書検定が出版社の自主規制につながったり授業の自由度が減るのではないかと社会問題になりました。
また、家永検定教科書事件を元にしたエピソードがあるテレビドラマがあったので、リンクを共有しておきます。
問題7
子どもが普通教育を受けることは誰にとっての義務か?
親が正解です
よく勘違いされやすいのですが、親は子供に普通教育を受けさせる義務があり、これは言い換えると普通教育を受けたい子供を無理やり働かせることを禁止されています。
しかし、子どもにとってはあくまで普通教育を受けるのは権利であるので、いじめられたり、一斉授業の形式が会わなかったりなどで自発的に学校に行かないということは特に問題ありません
問題8
学問の自由の内容として不適切なものはどれか
教授の自由が正解です
学問の自由に関しては教員採用試験には直接は出てきませんが、学習指導要領を理解するための背景内容となります。 明治時代では学問弾圧が行われたので、その反省から日本国憲法では学問の自由を保障しており、具体的あ内容は以下の3つです。
- ・学問研究の自由……真理を探究することの自由
- ・研究発表の自由……成果を発表できない研究は無駄となるため
- ・教授の自由……先生が生徒や学生に教える内容、方法の自由
問題9
電子書籍を教科書として使うことはできるか?
できるが正解です
教科書検定はあくまで内容を見るためのものです。そのため、形態が電子記録であっても、教科書として使用することはできます。(学校教育法34条2頂)
憲法学としてこの論点を聞かれることはありませんが、教採の試験に出る可能性はあるので、雑学程度に知っておきましょう。
問題10
小学校から高校までの教員の教授の自由の有無
一部のみ認められるが正解です
憲法によると、学問の自由として大学での教育は完全な教授の自由が認められるべきとされています。
小学校から高校までの教育の自由については、旭川学力テストの判例によると下記の理由から一部教育の自由を制限しています。
- ・自由よりも教育の機会の平等の方が大事であるため
- ・子どもには教育内容を疑って批判する能力に欠けるため
問題11
教育内容の決定権が国にあるのか教師にあるのかが社会問題になるきっかけとなった事件
旭山学力テスト事件が正解です
旭山学力テスト事件は国が一律で行おうとした学力テストを教師が実力行使で止めようとした事件です。
この事件の名称は法学部でもない限り限り覚える必要はありませんが、事件当時は学習指導要領の立ち位置などもまだ曖昧であり、この事件がきっかけとなって、学校基本法や学習指導要領の立ち位置が明確になったので、教育法学上では大きな意味を持つ事件です。
問題12
大学の自治の内容として当てはまらないものはどれか
大学内の政治活動の自治が正解です
大学の自治は学問の自由をを強化するための制度的保障として憲法23条により保障されており、具体的な内容は以下の2つに分類されます。
- ・研究者の人事の自治
- ・施設・学生の管理の自治
問題13
大学生の団体の社会問題を題材とした演劇の公演で、潜入捜査していた私服警察に対して暴行を加えて追い出そうとした事件
東大ポポロ事件が正解です
日本国憲法憲法では、勉強や学問研究は自由に行えることは大事とされています。(これは学問の自由や教育を受ける権利とよばれています。)
これらの制度的保障として、勉強と学問の中心地である大学では、一定の自治が認められています。
その背景の中で、大学の学生団体が研究活動として行った政治性の強い演劇に警察が危険性を感じて潜入捜査をするということは学問に対する統制という意味を持つのではないかと社会問題になりました。
なお、裁判の判決によると「大学の公認した学内団体であることのみをもって特別な自由をもつものではなく、実社会の政治的活動は学問研究とは異なる」ため、警察の捜査は問題ないと結論づけました。
問題14
憲法はなぜ教育の権利を保障しているのか
民主主義発展のためが正解です
日本国憲法は「民主主義」の考え方を大事にしている法です。
その考えは憲法26条にも現れており、教育は主権者である国民を育成し、健全な民主主義を発展させるために必要であることから教育を受ける権利を保証しています。
司法試験でも受けない限り覚える必要性はありませんが、背景知識として知っておくと教育に関する法規も理解しやすくはなります。
問題15
教育を受ける権利の性質は自由権と社会権のどちらの性質を持った権利か?
両方が正解です
選択肢に書かれている自由権、社会権とは以下のことをいいます。
- ・自由権……やりたいことを国によって禁止されない権利(国家からの自由)
- ・社会権……不自由ない生活のために国に要請できる権利(国家による権利)
- ・自由権的性質……学習者が学校選択や文理選択、授業科目を自分で選択することができる
- ・社会権的性質……国家に対して、学習指導要領や教員の配置などの制度設計を要請する
問題16
教育内容の決定権は誰にあるか
国,教師・親が協力して決定が正解です
教育内容の決定権は誰が持つのかについては教育権論争と呼ばれており、各選択肢の考え方自体はそれぞれ法律学者によって考察されています。なお参考までに各選択肢の考え方は下記の名称で呼ばれております。
- ・教育内容の決定権は国にある……国家教育権説
- ・教育内容の決定権は教師にある……国民教育権説
- ・教育内容は国,教師・親が協力して決定……折衷説
- 国が教育内容の大枠を学習指導要領として定める
- 学習指導要領の内容の範囲内で教師が具体的な授業に落とし込む
問題17
義務教育の無償の範囲
授業料のみが正解です
授業料のみは授業料無償説とも呼ばれています。
学説では「就学に必要な費用全て」の方が適切であるという考え方もあります。
なお、経済的理由により就学が困難な児童・生徒に対しては授業料以外に必要な教育費についても支援を行うことで、学習権、教育の機会均等を保障することが下記の教育基本法や学校教育法という形で国や地方公共団体に要請されています。(下記条文も教採の問題に出題されることもあるので余裕があれば知っておきましょう。)
- ・教育基本法4条3項:能力があるにもかかわらず、修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
- ・学校教育法19条:就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、必要な援助を与えなければならない。
問題18
学校教育で平等を大切にする考え方
教育の機会均衡が正解です
普通教育に関しては、子供の段階で平等が確保されないと、本人によってコントロールできないことで格差ができてしまうことから、「自由」よりも「機会の平等」を大切にされています。
その考え方を明記したものが憲法26条の条文にあらわれており、「法の下の平等(憲法14条)」をさらに具体的にしたものです。
この考え方を根拠にして、「中立確保法」といった教員による政治活動や政治教育の禁止、「学習指導要領」による学年ごとの教育内容の統一がなされています。
なお、平等を大切にするとはいっても、適正や能力の違いといった合理的な理由に基づいた異なる取り扱いは認められているそうです。
問題19
国民各自が人間として成長、発達し、自己の人格を完成、実現させるための必要な学習をするための権利
学習権が正解です
憲法26条に記載されている教育を受ける権利は学習権が中心となっています。
なお、問題文中の言葉は旭川学力テスト事件の判例の定義をそのまま参照しているため、分かりにくくなっています。
問題20
学習指導要領の法的拘束力の有無の通説はどれか?
大網的基準説が正解です
日本の小学校~高校までの教育は「自由」よりも「平等」を重視しています。
この平等な教育を実現するためには国と教師・親が共同して子どもの学習内容を決定するのが適切なのではないかという考え方が主流になっています。(学習内容の決定者は誰が適切かは諸説あります)
上記の考え方に基づいて、教える内容について国、教師は以下のように関わっています。
- 国:学習指導要領で、内容の大枠を定める
- 教師:学習指導要領の内容に沿って、具体的な授業に落とし込む
(例えば、教育で自由な教育を重視したり教師が中心となって学習内容を決定するのが適切という立場に立つと学習指導要領の法的拘束力は不適切という全面否定説となり、学校制度の大枠だけは平等とした上で教師の教え方は自由であることが適切という立場に立つと、学習指導要領は学校制度基準説の結論がそれぞれ導き出されます)
